燕窩一古くて新しい健康食一
薬膳として 燕窩の効用 燕窩を用いた薬膳例
中国で古くから不老長寿の聖薬として用いられた燕の巣はあの美人として有名な楊貴妃も好んで食べたと言われ、美人との関連が切れない。今回、「週刊香港」8/2号に燕の巣特集がでた。燕窩も一頃から見ると大分安くなったようであるが、美容と健康のために薬膳料理を作ってみてはいかがでしょうか。燕窩の近代的な効用は本文に詳しく述べたので参照して下さい。
紅楼夢のヒロイン林黛玉が愛用した燕窩湯の作り方を一例にすると、次のようにして作ります。「燕窩3gを50℃のぬるま湯につけて柔らかくし、水をきってから細かく刻み、これを氷砂糖30gを250mlのお湯に溶かして出来た砂糖湯に加えて煮たててから食べる。」


薬膳として 燕窩の効用
1 漢方薬として
元の人 賈銘; 明の太祖に長寿の秘訣を問われて(百余才で死去)
「飲食須知」八巻、1397年(至正27年);記載あり
超学敏の「本草綱目拾遺」1765年(乾隆30年);記載あり
明代の1573年(万暦元年)頃、屠本シュン(トホンシュン)の「ビン中海錯疏」
「南海の珍味で、燕が崖の中腹に作った巣へくわえてきた小魚が変化したもの;燕がその巣をくわえて海上をとび、疲れて波間に浮かべて一服する;燕が海藻で作った巣」
陳懋仁(チンモジン)の「泉南雑誌」1606年(万暦34年);
燕窩は南海の燕が貝を食べて作った
明末になると熹宗の頃、帝は炙蛤、鮮蝦、燕巣、魚翅(ふかひれ)などの膾を好んで食べたとの記載があり、宮廷で高級料理として燕巣、魚翅が料理されることが多くなった。また、当時の悪宦官・魏忠賢は下司らしく、とりまきと、下種料理の狗羹を食べたと書かれていて面白い。
犬と言えば、かつては大切な食材の一つであったが、だんだん下等料理になった。にも関わらず、清末の大政治家‘李鴻章’が全権大使としてロンドンヘ行った時、ときの英国首相からシェパードを贈られ喜んで食べてしまったという話が残っている。それは英国に抵抗することもあるとの気概を示したものと考えられる。李鴻章は下関条約調印の際にも日本側を圧倒した。わが国にもこのような人材が欲しいものである。犬料理は中国や朝鮮半島では現在もポピュラーな料理であるし、日本でもかつては犬を食用にし赤犬を好んだとあるが、中国では、黄犬、黒犬、ついて赤犬の順となっている。南方では白犬が好まれるというが、愛犬家が眼を剥きそうな話ではある。
中華料理のバイブル「髄園食単」は著者の袁枚(えんばい)が1787年(乾隆52年)72歳を過ぎてから書き上げた。この「髄園食単」の献立の第一に上げられているのが燕窩である。また、我が国の書では「唐山款客式」1798年(寛政10年)に珍味の第一には熊掌を第二に燕窩をあげている。
いずれにしても楊貴妃の昔から紅楼夢のヒロイン達に至るまで燕窩を愛用した「補中益気」の効能があり、主に疲労回復、肺結核、喀血、吐血、慢性下痢、慢性マラリア、咽、胸のつかえや吐き気を治すのに使用。白色のものは痰疾、咳をとめ疲労衰弱を治す効がある。また、血燕は血痢、小児痘疹に有効。
用法例1 老人性喘息の治療
白梨1個の芯をとり、燕窩3gを入れ、熱湯に浸してから氷砂糖3gを入れて十分蒸し、毎朝服用する。
用法例2 下痢の治療
燕窩6g、人参1.5g、水2.7gを重湯煎にのせ、とろ火でゆっくり煮て食べる。やや処方は異なるが、本草約性大辞典にも記載がある。
用法例3 老人の痔疾と小児の胎熱の治療
燕窩9g、氷砂糖1.5gをよく煮て数回、頓食する。
燕窩は補中益気の上薬で肺を治し、胃を和らげるから虚労を去り、肺に入って気となり、腎に入って水を養い、胃に入って中を補うから心身の疲労回復に効がある。薬石で治癒しない場合に有効な時が多いが、火勢が強いときは重剤を用いなければならない。特に、老人の肺結核や小児の衰弱や無気力を治する。
燕窩は今日では粥にしたり、鶏汁で煮たりして非常においしものである。薬膳として用いられる所以であろう。一切の虚症に有効であるから、肺.脾の衰弱に応用して優れた効果がある。また、血燕は血痢を治し、血液を補う。
燕窩を用いた薬膳例
1 牛乳燕窩湯(ニウルーイェンウオタン)
燕窩細片(毛やごみのないもの)6gを水に入れ水分がなくなるまで煮込み、沸騰した牛乳500gを混ぜて出来上がり。
[効能] 益脾和胃、滋陰潤燥の効がある。胃の虚弱、嘔吐、胃液不足、固便などに用いる。
2 鶏茸燕窩(ジルンイェンウオ)
燕窩75gを50℃の温水で戻し、毛などのごみを除き、よく洗って碗に入れ、蒸しがまで15分蒸してから丼に入れる。これに、鶏胸肉100gを挽肉として卵2個分の白身、水50gを加えて良く混ぜ、熱湯750gから作った薄あんかけ(適量の食塩と調味料で味付けする)に、ゆっくり入れて軽くゆり動かし火が通ってから丼にかけて出来上がり。
[効能] 養陰補益脾の効があり、肺虚、咳、ね汗、胃陰虚などに効く。
3 燕窩捶鶏絲(イェンウオツイジースー)
ひな鳥の胸肉400gを細かく切り、卵の白身2個分を混ぜてペースト状にし、緑大豆粉250gをひいた台の上で平らに伸ばし、約15分蒸す。これを簾状に切って碗に盛る。これに燕窩25gを葱、生姜、山椒少々を加えた湯250gからとれる蒸し汁で茄でたあと碗に加えて食べる。
[効能] 補腎養血、補脾和胃の効があり、体虚、食欲不振、目まいなどによい。
[参考] 生姜(しようが)は各地で栽培される多年生草本の根茎である。高温で多湿の地によく生育する。漢方薬としても重要であるが、食材としても欠かせない一品である。精油、辛味(ジンゲロール)、黄色色素クルクミンなどを含み、鎮静、鎮痛作用、鎮吐作用、消化促進、血圧下降作用などのほか、プロスタグランジン生合成阻害作用、血小板凝集抑制作用などが報告されている。
[参考] 山淑(さんしょう)は落葉低木で雌雄異株。葉も料理に添えて利用するが、漢方では果実を採取して、種子を除いて乾燥して保存する。日本薬局方記載の医薬品である。精油、辛味成分、アルカロイドを含み、中枢神経を刺激して健胃、整腸、利尿作用などがある。
4 清蒸燕窩鴿蛋(チンジョンイェンウオゴーダン)
燕窩30gを鶏のスープに料理酒を加え、煮立てた中に入れて1分間煮込んでから取りだし、清潔なタオルで水分を除いてからだし汁に入れ、周りに鳩のゆで卵24個を並べ、ハムの千切りを散らして出来上がり。
[効能] 補益、脾胃、補腎生血の効があり、腎虚による四肢の無力感、めまいなどによい。
5 燕窩湯(イェンウオタン)
燕窩3gを50℃のぬるま湯につけて柔らかくし、水を切って細かく刻む。これを氷砂糖30gを水250mlに溶かした砂糖湯に加えて煮立ててから碗にもって出来上がり。1日1回服用する。紅楼夢の美女達が愛用した常備薬。
[効能] 補虚、益損滋腎潤肺の効があり、虚労による体弱や咳嗽、血痰に効く。
6 燕窩粥(イェンウオヂョウ)
燕窩10gを布に包んで湯煎にかけ、数回煮立ててから取り出し、うるち米50gを入れて粥を煮る。随時、食用する。
[効能] 補中.益気、養陰潤燥の効があり、陰虚労損による体弱や咳嗽、血痰、ね汗、瀕尿などに効く。
7 菊花燕菜(ジゥファイェンツァイ)
燕窩250gを50℃のぬるま湯につけて柔らかくし、熱湯(重曹を小量加える)に2分ほど浸けてすくいだし、更に2回1分間ずつ浸けてすくいだし、充分にもどしてからガーゼでよく水気をとり、スープ1Lに入れて白菊の花びら100gと上質のもやしを加え、料理酒を加えて煮立てた後、アクをのぞいて鶏油を少量かけて出来上がり。
[効能] 養陰潤燥の効があり、清肺中虚熱によく、老人の痰のからむ喘息や肺虚に有効。
8 攅絲燕菜(ザンスーイェンツァイ)
燕窩18gを鉢に入れ、水を加えてもどす(15分位)。重曹3gをのせ熱湯をかけて箸でゆっくりかき混ぜ、完全にもどしたら熱湯で2〜3回洗い、ガーゼで水気を取る。
鶏肉、もどした椎茸、もどした干し筍、黒くわいの千切りそれぞれ15g、ハムの千切り45gをそれぞれ茄でてからスープで煮込み、味をしみこませて水気をきり、深鉢に並べ、その上に上記の燕巣を並べる。これにスープを熱くして静かに入れて出来上がり。
[効能] 滋肺補腎、健康長生きの効があり、肺陰虚、肺結核による体弱や咳嗽、喀血、血痕に効く。
9 龍枸燕窩湯(ルンゴウイェンウオタン)
熱湯に燕窩50gを入れてもどし、更に水150 mLを加えて約30分蒸して充分に水を吸収させてからスープ皿に移す。微温湯に漬けて洗った枸杞20gと竜眼肉20g、氷砂糖250gを大碗に入れ熱湯550 mLを注いで蒸し、上澄みをスープ皿に入れて出来上がり。
[効能] 滋陰養血の効があり、ね汗、咳、目のかすみ、不眠などに効く。
[参考] 枸杞(くこ)はナス科の落葉低木で、果実を枸杞子(くこし)、根皮を地骨皮(じこっぴ)、葉を枸杞葉(くこよう)といっていずれも局方外医薬品とする。この薬膳で用いるものは枸杞子である。卵型楕円形で長さ1.5〜2 cmで鮮紅色で日陰で乾燥してから天日で干しあげると良品の枸杞子が出来る。生薬として漢方で処方するほか、薬膳では欠かせない食材になる。カロチノイド、ビタミン類、セスキテルペンなどを含み、強精、強壮に朝鮮人参とイカリソウを加えて煎じて用いる。
[参考] 竜眼肉(りゅうがんにく)はムクロジ科の常緑高木の果実の仮種皮である。熟果を採取して生食するほか日干しして、果皮と種子を除いて保存する。フラボノイド、糖類、アミノ酸、脂肪、タンパク質、酒石酸などを含み、強壮薬、滋養強壮、鎮静薬として老人や虚弱体質に用いる。
10 白及冰糖燕窩(バイジピンタンイェンウオ)
燕窩10gと白及15gはよく洗浄してから薄くスライスして鍋に入れ、強火で水がなくなるまで煮詰める。白及だけを取り除き、氷砂糖小量を適量の水でとろ火で溶かして加えて出来上がり。
[効能] 補肺養陰、止血の効があり、肺結核の喀血、老人性慢性気管支炎、肺気腫、喘息などに効く。
[参考] 白及(びゃくきゅう)はラン科の植物で我が国でもポピュラーなシランの根茎である。ひげ根を除去して水洗し蒸してから外皮をはいで日干しにする。紫花、白花種があるが、いずれも収斂性止血薬として吐血、排膿の目的に用いる。
11 秋梨燕窩(チゥリイェンウオー)
秋白梨2個を用意し、へたの部分で蓋を作る。芯はくりぬいて燕窩5g、氷砂糖5gを詰め、蓋をして爪楊枝で止め、小量の水で煮て出来上がり。
[効能] 滋陰潤肺の効があり、肺虚、咳、痰の絡みなどに効く。
12 燕窩参(イェンウオシェン)
燕窩3gを温湯でもどし、よく水洗したものに西洋人参3gを加えて沸騰した湯を加え、とろ火で3時間水がなくなるまで煮て出来上がり。
[効能] 滋陰益気、益肺陰、清虚熱の効があり、肺結核による微熱、止咳、血痰、ね汗などに効く。
13 燕窩銀耳湯(イェンウオインアルタン)
燕窩6〜9gを温湯でもどし、よく水洗したものに銀耳10gを加えて水で1時間煮て、氷砂糖適量を加えて更にしばらく煮て出来上がり。
[効能] 滋陰潤肺、清熱止渇の効があり、肺結核による干咳、微熱、ね汗などに効く。
[参考] 銀耳は白木耳ともいい、シロキクラゲを乾燥したものである。シロキクラゲは雨期にブナ科広葉樹の枯れ木に生えるキノコの一種である。キクラゲは広葉樹のニワトコ、クワ、ニレなどの枯れ木に群生するキノコで乾燥したものは黒褐色で中華料理には欠かせない食材で、銀耳は高級中華料理に用いる。また、強精薬ともなる。
2001.10.28